ご挨拶


摩訶不思議なバソンの世界へようこそ。

ピアノ、ヴァイオリン、フリュートや鉦、太鼓にいたるまで、あらゆる楽器は磨きぬかれた魅力的な音色と美しい姿を持っている。 演奏者達は、それぞれの楽器をこよなく愛している。私達、バソン奏者もその例外ではない。 長い年月によって大地に育まれた黒光りする紫檀の美しさ、クールな輝きを持つクロム鍍金とのコントラスト。 フランス人の繊細な感性から生まれた直線的でシンプルな形・・・・毎日見ていても溜め息の出るほど、惚れ惚れと美しい。 20世紀の半ばまでフランスをはじめ、ヨーロッパの主流だったバソンは、その座をファゴットに譲り、 バソン奏者の数は激減してしまった。近年ではプロでもバソンという楽器の名前すら知らない奏者が多い中、 「のだめカンタービレ」の漫画や映画でバソンが取り上げられたお陰で、最近では広く一般にも知られる存在になった。 2010年5月に開幕した上海万博では、ヴァイオリンを弾くロボットが登場し話題になっている。 正に時代を象徴するような出来事である。 音には、ロボットによって奏でられる音もあれば、人間が長い時間を掛けて、 その土地の文化、歴史、宗教、芸術、気候風土、などによって育まれてきた人間の魂を象徴するような音もある。 私は、そんな生々しく肌の温もりの感じられるようなバソンの音が大好きだ。 低音楽器のわりには、よく鳴り響くはっきりとした音と存在感があり、特に高音は独特な色気に満ち溢れている。 個性的で、豊かな表現力と多彩な音色を持ち、酌めども尽きせぬ洒落た味わいがある。 バソンはなかなか手強いじゃじゃ馬のような楽器かもしれない。 しかしこのじゃじゃ馬はM. アラールやP. オンニュのような名調教師の手にかかると、 真に凛々しいサラブレッドのように、妙なる響きで我々を魅了する。 演奏者の顔、心、人生そのものが如実に音に現れる楽器バソン。 そんな楽器と日々戯れるのも一興ではないだろうか?扉はいつでも開いている。 われこそと思う侍は、いつでも門を叩かれたし。 今まで気が付かなかった未知との遭遇への旅路が貴方を待っているかもしれない。

日本バソンの会 会長    小山 清




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